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本学への寄付

NMNの単回投与で即効性の代謝改善効果を実証-菠菜导航网,澳门太阳城赌城が世界初の発見-
従来の複数回投与とは異なり1回の投与でもインスリン感受性向上と脂質代謝改善の効果が明らかに

 

 菠菜导航网,澳门太阳城赌城大学院医学系研究科病態制御内科学講座(第三内科)の研究グループ(廣重俊典診療助教、梶邑泰子診療助教、田口昭彦講師、太田康晴教授?責任著者)は、NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)の単回投与によって、脂肪組織と肝臓からの脂質の放出が抑制され、その結果全身のインスリン感受性が改善することを明らかにしました。本研究成果は、加齢や肥満に伴う代謝疾患に対する新たな治療アプローチの可能性を示すものです。
 NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)は、エネルギー代謝において重要な補酵素であり、肥満や糖尿病などの代謝疾患では肝臓や筋肉でのNAD+レベルが低下することが知られています。またNAD+レベルは年齢とともに減少するため、健康および加齢性疾患にも影響を及ぼします。NAD+の前駆体であるNMNについては、身体の細胞を若返らせる作用があるとして注目されている「サーチュイン遺伝子(Sirt1~7)」を活性化させる働きがあり、抗老化?長寿効果が期待されており多くの研究が進んでいます。そのなかでNMNを複数回投与あるいは長期投与によって様々な病態を改善することが報告されていますが、単回投与の急性効果についてはこれまで詳細に解明されていませんでした。

 本研究では、健康な若年マウスへのNMN単回投与でも代謝改善効果が得られることを世界で初めて示しました。本研究で認められた脂質代謝を介したインスリン感受性の改善効果とそのメカニズムの解析は、糖尿病や肥満などの代謝疾患治療におけるNMNの実用化と新たな治療開発につながるものと期待しています。
 本研究成果は、2025年6月3日付でオンラインで先行公開されました。2025年9月に「Endocrine Journal」誌に掲載予定です。「Endocrine Journal」誌は内分泌代謝学分野の中で最も歴史のある英文ジャーナルの一つです。

研究成果

 本研究では、健康な若年マウスにNMNを単回投与し、肝臓、骨格筋、脂肪組織を用いて代謝変化を解析しました。その結果、以下のことが明らかになりました。

  1. ?NAD+代謝の活性化:NMN投与後、肝臓や脂肪組織でSirt1やNampt遺伝子の発現が増加し、細胞内NAD+レベルの上昇が示唆されました。
  2. ?インスリン感受性の向上:NMN投与によって、骨格筋でのブドウ糖の取り込みが亢進しました。インスリン分泌能には影響なく、インスリン感受性が高まっていると考えられます。
  3. ?脂質代謝の改善:NMN投与後、血中のNEFA(遊離脂肪酸)濃度が低下し、RQ(呼吸商)が減少しました。これは、エネルギー源として脂質の利用が促進されたことを示しています。
  4. ?脂肪組織?肝臓からの脂質放出抑制:NMN投与が脂肪組織からのNEFA放出と肝臓からのLDL/VLDL(低密度リポタンパク質/超低密度リポタンパク質)の放出を抑制することも明らかになりました。NEFAの低下がインスリン感受性を高め、筋肉へのブドウ糖の取り込みを亢進させるメカニズムの1つである可能性が考えられます。

 上図はNMNの代謝経路とその効果についてです。NMNが体内に取り込まれると、NAD+に変換されます。NAD+はSirt1という酵素を活性化しそれぞれの臓器へ作用します。骨格筋ではNMN投与前にくらべて糖の取り込みが増加し、インスリン感受性が高まります。またNMN投与によって、脂肪組織からの遊離脂肪酸の放出が抑制され、肝臓からのLDL/VLDLの放出も抑制されます。

 グラフはインスリン負荷試験の結果です。対照群、NMN投与群それぞれにインスリンを投与し、時間毎に血糖値を測定しインスリン抵抗性を調べる試験です。インスリン投与直前の血糖値を100%として、変化率を示しています。結果は、インスリン投与後60分および90分時点で、NMN投与群は対照群より血糖値が有意に低下していることがわかりました。これはインスリンがより効果的に働いている、つまりインスリン感受性が亢進していることを示します。

研究の意義?今後の展望

 本研究は、NMNの単回投与でも代謝改善効果が得られることを世界で初めて詳細に示しました。特に、脂質代謝の改善を介してインスリン感受性を高めるというメカニズムは、糖尿病や肥満などの代謝疾患に対する新たな治療アプローチの開発につながる可能性があります。
 NMNの投与タイミングが重要で、活動期の開始前後に投与することで、より効果的に脂質利用を促進し、インスリン感受性を高める可能性があります。NMNの薬理動態については更なる研究が必要ですが、本研究の成果が代謝疾患治療におけるNMNの実用化に貢献することを期待しています。

書誌情報

  • タイトル: Single bolus injection of nicotinamide mono nucleotide increases systemic insulin sensitivity in association with activation of NAD salvage pathway in the liver and adipose tissue in mice(ニコチンアミドモノヌクレオチドの単回注射は、マウスの肝臓および脂肪組織におけるNADサルベージ経路の活性化に関連して全身性インスリン感受性を増加させる)
  • 著者: Shunsuke Hiroshige, Yasuko Kajimura, Yuko Nagao, Akihiko Taguchi, Ryoko Hatanaka, Chika Yodokawa, Yuka Fujioka, Masaru Akiyama, Yukio Tanizawa and Yasuharu Ohta(廣重俊典、梶邑泰子、永尾優子、田口昭彦、畠中諒子、淀川千佳、藤岡侑香、秋山優、谷澤幸生、太田康晴)
  • 掲載誌:Endocrine Journal(2025年9月掲載予定)
  • D O I:https://doi.org/10.1507/endocrj.EJ24-0312

謝辞

 本研究は、日本学術振興会からの研究助成(22K08626、23K06401)および日本糖尿病協会からの研究助成によって支援されました。

用語解説

?NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)
NAD+の前駆体で、細胞のエネルギー代謝に重要な役割を果たす物質。

?NAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)
細胞内のエネルギー代謝に関わる重要な補酵素。

?Nampt(ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ)
哺乳動物のNAD合成経路において、NAM(ニコチンアミド)をNMNに変換する酵素。

?Sirt1
細胞内でのタンパク質構造の調整に重要な役割を果たし、老化や寿命の制御、そしてがんや糖尿病などの疾患に関与するNAD+依存性の蛋白質脱アセチル化酵素。

?インスリン感受性
体の細胞がインスリンに反応してグルコースを取り込む能力。インスリン感受性が低い(インスリン抵抗性がある)状態では 血糖が下がりにくく糖尿病や脂質異常症、心血管疾患のリスクを高めることになる。

?RQ(呼吸商)
体が消費する酸素量と産生する二酸化炭素量の比率(RQ=産生されたCO2量÷消費したO2量)で、エネルギー源として何を利用しているかを示す指標。RQが1.0に近ければ主に糖質をエネルギー源として利用しており、0.7に近ければ主に脂質をエネルギー源として利用している。

?NEFA
遊離脂肪酸。トリグリセリド(中性脂肪)が分解されて生じ、絶食時やエネルギー需要が高まったときに脂肪組織から放出され、エネルギー源として全身の組織で利用される。遊離脂肪酸や中性脂肪が高い状態は糖尿病や脂質異常症、心血管疾患のリスクを高めることになる。

?LDL/VLDL
低密度リポタンパク質/超低密度リポタンパク質。肝臓で合成された脂質はVLDLとして血中へ放出され、VLDLは末梢組織にトリグリセリドを輸送する。輸送後VLDLはLDLへ変換され、コレステロールを肝臓から末梢組織へ輸送する、「悪玉」コレステロールと呼ばれる。高LDL/VLDL血症は動脈硬化のリスクが高まる。

 

問い合わせ先

  • <研究に関すること>
    菠菜导航网,澳门太阳城赌城大学院医学系研究科病態制御内科学講座
    TEL:0836-22-2251
    講師 田口 昭彦(たぐち あきひこ)
    E-mail:a.tgc@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp )
    教授 太田 康晴(おおた やすはる)
    E-mail:yohta@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp )
  • <報道に関すること>
    菠菜导航网,澳门太阳城赌城医学部総務課広報?国際係
    TEL:0836-22-2009
    E-mail:me268@(アドレス@以下→yamaguchi-u.ac.jp )
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